*花は彼に恋をする*【完】

……あっ!!

私は荷物を持ったまま目を見開いた。

遠くても見間違うはずはなかった。

私の中で忘れようとしても

忘れられないあの人。

ネクタイを緩めながら

スーパーへと足を進めるあの人は

まだ私には気づいていない。


「……黒瀬課長!!」

私は名前を呼んでしまった。

「……!?」

黒瀬課長は立ち止まり

一瞬驚いて辺りを見回した。

そして

「……あっ。」

私を見つけた彼は

こちらに駆け寄って来てくれた。

「…野田さんじゃないか?
お疲れ様…買い物帰りか?
この辺に住んでいたのか?」

私が持っている買い物袋を見ながら

彼は優しい顔で聞いてきた。

……ドキン。

高鳴る気持ちを抑えながら

「…はい、近所…なんです。
黒瀬課長も…近所なんですか?
お買い物ですか?」

私も彼に聞き返すと

「……まあ、そうだな。
近いかな。
年明けに引っ越したんだよ。
今日は何となく夕飯作るのが面倒で
弁当か惣菜残ってたらと思ってね。」

参ったな…。と恥ずかしそうに笑う

黒瀬課長の姿を初めて見た私は

また少しドキッとした。












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