彼となら、   熱くなれる
α.悲しい現実
私は守口珠良。獣医。

守口家は先祖代々医者の家系だった。

私の5代前は仙台のⅩⅩ藩のお殿様に仕える医者だったらしいと父から聞いたことがあった。

父は産婦人科医、兄は外科医、姉は歯科医だ。

兄と姉は年子だが、私は二人と少し年が離れていたので、一家の中ではかなり可愛がられていた。

母は数年前に他界した。

交通事故に巻き込まれて不運にも帰らぬ人となった。

私は未だ信じられずにいた。

多忙な日々の中でどうしても信じたくないという思いがあった。

もっと母のそばにいたかった。

もう叶わぬ願いだった。

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