星になれたら。
お人好しな天使
暫くして二人はスーパーの前にいた。
「あの?」
杉本は訳が分からないといった表情をしている。
それはそうだろう。
いきなり腕をひかれたかと思えば連れて来られた場所はスーパーなのだから。
結衣はそんな彼にもお構い無しで「ついてきてください」と歩き出す。
向かった先に居たのは30代半ば程の女性だった。
整った容姿だがその表情には疲労が伺えた。
彼女は開店準備のため忙しく動いていた。
「あの人、私のお母さんなんです。ウチ、母子家庭で私を学校に行かせる為にこうして毎日一生懸命働いてて…」
母親を悲痛な面持ちで見つめながらポツリと話出す。
「私が死んでしまったらお母さん一人になっちゃう。私まだお母さんに何も返せてないのにこのまま死にたくなんて無いんです。少しだけ。私を体に返して貰えないでしょうか」
涙で頬を濡らしながら必死に自分にすがりつく結衣に胸を傷めながらも杉本は首を横に振った。
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