雪恋ふ花 -Snow Drop-

そして、気がつくと、春人にもらった写真集を抱えて、珠はそのままの格好で、家を飛び出していた。
泣きじゃくりながら走っていると、道行く人が何人も振り返って見たが、今はそんなことを気にする心の余裕はなかった。

2か月前に一度行ったきりの春人のマンションに、少し迷いながらたどり着いた。
震える手で、インターフォンを押す。


「はい」


夜遅くの訪問者をいぶかしむ、少し硬い春人の声。


「珠です」


モニターを確認した春人の声が心配そうなものに変わる。

「どうした? すぐ開ける」


オートロックを解除した春人が、驚いた顔で自分の部屋のドアーを開けて待っているのが、エントランスの扉越しに見えた。
珠はそのまま、春人の胸に飛び込んだ。


「とにかく中に入って」

< 119 / 181 >

この作品をシェア

pagetop