雪恋ふ花 -Snow Drop-
「あれから、スキー行った?」
「いいえ」
「そっか」
春人はさりげなさを装って、軽く言った。
「あのさあ、今度、近場に行くんだけど、一緒に行くか?」
「え……」
珠が案の定、困った顔をする。
「パラレル、滑れるようになりたいんだろ?」
「うん」
「あ、宿には泊まらないから、安心しろ」
「泊まらないって?」
春人が夜行バスで行って、一日滑って、その日の夜に帰ってくるツアーの説明をした。
1万円でリフト券つき、お得なプランだった。
まだ返事をしぶっている珠に、春人は追い打ちをかける
「チョコレートのお返し」
「え?」
「手作りチョコもらったからには、倍返しだろ? インストラクターというわけには行かないけど、教えるくらいはできるよ」
珠が今日初めて声を出して笑った。
「いいの? 一緒に行っても?」
「もちろん。だから、誘ってるの」
珠がうれしそうに微笑んだ。
それから、日程を調整して、初めて連絡先を交換した。