風の放浪者
『苦手な方が多いようで』
「先程の人物よりはいいよ。いや、天然の方が最強か」
エリックの場合、あの性格を除けば普通に会話を交わすことが可能だがエリザは違う。
自分が持つ天然の部分を自覚しておらず、話しが一方通行になってしまう。
これが一番の問題といっていい。
『我は、如何いたしましょう』
「それなら、フリムの手伝いをしてきてくれ。あの性格が、気になっている。悪いことが起きなければいいが」
『……御意』
一瞬、相手からの返事が遅れる。
フリムカーシの性格は、精霊なら誰もが知っている。
それにユーリッド側にいる精霊は、彼女と同じ位置にいる存在――つまり、他の精霊よりも彼女の性格を熟知している。
冬を司る精霊、それがこの精霊の正体で名前はレスタという。
ユーリッドの命令に従い、レスタはフリムカーシのもとへ急ぐ。
彼の気配が完全に消えたことを確認すると、ユーリッドはエリザの側へ向かうことにする。
するとエリザは大声で名前を叫び、修道女にとしては有り得ない行動を取る。
それは、ユーリッドを指で指し示したのだ。
「こんな所にいらっしゃったのでしたか。ユーリッドさんのことを捜しました。何処にもいらっしゃらなくて」
言葉は上手く敬語を用いていたが、いかんせん態度はそれに伴っていない。
現在の姿を他の修道女や修道士に目撃されてしまったら、どのような反応を取られるか。
結果は、以前の荷物事件と同じで、説教の嵐が吹き荒れる。また、下手すればとばっちりを受けてしまう。
「ちょっとね。でも、歌は聞いていたよ」
「私の歌、どうでしたか?」
「細かい感想というのは難しいけど……とても綺麗だった。神話について、歌っていたかな」
「はい。有名な歌ですから」
「そうだね。あれは、知らない人はいない」
「勿論です。精霊を信仰している者なら、この歌を知っていて当たり前のことです。それと……此処では他の方々の出入りに邪魔になってしまいますから、続きは中で話しましょう」
流石に、出入り口での立ち話は他の者達の行き来の邪魔になってしまう。
今日は祭りの日で、参拝者はいつもの倍以上といっていい。
彼等の周囲は多くの人間がごった返しており、二人はその中を縫うようにして礼拝堂の中に立ち入ると中断してしまった会話を再開する。