小咄
 真砂が脱衣所から出ようとすると、何故かドアが開かない。
 力を入れて引き戸を引くと、ドアにもたれていた深成が、廊下でころりと転がった。

「何やってる」

「だって、雷が」

 言われて耳を澄ますと、確かにまた雷が鳴っているようだ。
 さっきと違い、真砂にも聞こえる。

「だからって、こんなところで待つな」

「だって、一人じゃ怖いんだもん。折角課長のお家にいるのに、何で一人にならないといけないのさっ」

 もしかして、会社から出たときぐらいの雷であれば、この子供は風呂場まで入ってきたんじゃなかろうか、と、真砂はいろいろ心配になる。

「TVでも付けておけばいいだろう」

 言いつつ、真砂は廊下に出、寝室に入った。
 クローゼットから、シャツを一枚取り出す。

「ほら、とっとと風呂入ってこい。早くしないと、ますます雷が酷くなるぞ」

「あ、うん。ありがとうっ」

 真砂からシャツを受け取り、慌てて深成は脱衣所に飛び込んだ。

「さてと」

 早速深成は、洗濯機に洗剤を放り込み、スタートボタンを押す。
 思ったほど音は大きくなかったが、全くないわけでもない。

---さ、早く入っちゃわないと。途中で停電なんかになったら、えらいことだし---

 ぱぱっと服を脱ぐと、深成はそそくさと浴室に入った。
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