小咄
「ほら。あんたは変なものが好きだよねぇ」

 千代が差し出したグラスを、深成が嬉しそうに受け取る。

「え〜? 千代が教えてくれたんじゃん」

「梅とオレンジだったら合うんじゃないかって言っただけだよ。しかもそれ、ほとんどジュースじゃないか」

「そんなことないよ。ちゃんとお酒の味するよ?」

 ごくごくと梅酒のオレンジジュース割り(およそ1:9の割合だが)を飲む深成を、捨吉はよしよしと撫でる。

「深成は可愛いねぇ。そんなものでも、ちゃんと酒の味がするなんて」

 あからさまに深成に触れ、はっきりと『可愛い』と言っているのに、何故か捨吉がそういうことをしても、六郎の心は、そう騒がない。
 むしろ、その横で静かに食べている真砂のほうが気になる。

 真砂は何も言っていないのに、気付けば深成が、ひょいひょいと真砂の椀に具材を入れていっているのだ。
 その態度がやけに自然で、当たり前の光景のようだ。
 事実、誰も何も言わないところを見ると、こういう二人の関係は、いつものことなのだろう。

 やきもきしていると、捨吉が、ずいっと六郎に顔を寄せた。

「ねぇ六郎さん。六郎さんって、深成とどういう関係なの?」

 ずばりと言う。
 今まで落ち着きなく深成を見ていた六郎が、我に返って顔を上げると、少し酔っ払った捨吉と、その横ではあきが、興味津々の眼差しで見ている。

 捨吉は純粋に好奇心だろうが、何だかあきの視線には、別のものが含まれているような。
 怪しく目尻が下がっている。

「どういうって」

「幼馴染みって聞いたけど、随分歳離れてるよね?」

「そ、それはそうだが。親が知り合いだったこともあって、深成ちゃんはほとんど私の家で育ったようなもんなんだ」

「へーっ。お兄さんじゃんか」

「一つ屋根の下ね……」

 無邪気な捨吉の後ろから、ぼそ、とあきが呟き、ふふふ、と不気味に笑った。

「六郎兄ちゃんは優しかったからさぁ、わらわ、べったりだった」

 捨吉と同じく無邪気に言う深成の、何の気なしに言った言葉に、真砂は僅かに視線を上げ、六郎は照れたように頭を掻いた。
 そして何故だかあきが、ずいっと身を乗り出す。
 大人しいあきが、このように前面に出てくるのは珍しい。
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