小咄
 かくて真夜中。
 すっかり不機嫌な真砂と、ぬいぐるみを抱えた深成と、少し微妙な顔の六郎が、一つのベッドの上にいた。

 確かに真砂のベッドは広い。
 三人だと、さすがにそれなりに引っ付かないといけないが、寝られないことはない。

 しかし、ここでまた、問題が発生する。
 引っ付かないといけないということは、並びに大きく影響する。

 六郎は考えた。
 男と引っ付いて眠るのは避けたいが、可愛い深成を真砂に引っ付かせるのも避けたい。
 ここは己が身をもって、深成を守るべきだろう。

「深成ちゃん。深成ちゃんは、こっちに寝なよ」

 六郎が、ベッドの真ん中にちょこんと座る深成に言う。
 そして場所を変わるべく、身を乗り出した。
 だが。

「何故俺が、お前なんぞと並んで寝ないといかんのだ」

 不貞腐れたように、背を向けて寝転んでいた真砂が、じろりと視線を上げる。

「当たり前だろう。深成ちゃんを、君の横などに置いておけるか」

「何故俺なら駄目で、お前ならいいと思うんだ」

「深成ちゃんのことは、私のほうが昔から知っている」

「お前は昔しか知らない、というんだ。むしろ、そんな野郎のほうが危険だぜ。最近を知ってる俺のほうがマシだ」

 またもや深成を挟んで火花が散る。
 二人に挟まれ、深成はうさぎを抱いたまま、きょろきょろと交互に様子を窺っていたが、う〜ん、と困ったように俯いた。

「どういう意味だ。私は深成ちゃんを、そんな目で見ていない!」

「だったら尚更、引っ込んでやがれ」

 なかなか会話が際どいところに達し、あき辺りが聞いていたら、おおっと身を乗り出すところだ。
 が、如何せん間にいるのは、うさぎを抱えた深成である。

 深成には、何故二人がこんなに言い争っているのかわからない。
 『男同士で引っ付くのが嫌なら、自分を真ん中に置けばいい話なのに、何が気に食わないんだろう。眠いなぁ』などと思っている。

「き、君は一体、深成ちゃんをどう思っているんだ」

 六郎が核心をつく。
 真砂が口を引き結んだ。
 射るような目で六郎を睨み付ける。
 ぞく、と六郎は寒気を感じた。

「うもぅ〜。二人とも、何をそんなに言い争ってるのさ。折角真砂がベッド貸してくれてるのにさ〜。そうそう、真砂、ありがとうね。真砂には恩があるから、わらわはここね」

 相変わらず凍り付いた空気にも気付かず、深成が言いながら、ころりと真ん中に横になる。
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