小咄
「う~ん……」

 久しぶりにリラックスしてゆっくり寝たな、と、深成は布団の中で伸びをした。
 といっても身体には真砂の腕が巻き付いているので、あまり動けないが。

「よっく寝てる」

 深成を封じ込めたまま、真砂はまだ目を覚まさない。
 きっと真砂も久しぶりに熟睡したんだな、とにまにましつつ、深成は真砂の寝顔を眺めた。

---やっぱりイケメンっても、片桐さんとは全然違う。真砂は男っぽいもんね。まぁ片桐さんも綺麗だからモテるだろうけど、やっぱり断然真砂のほうが格好良い---

「何考えてる」

 いきなり真砂の目が開いた。
 じぃっと真砂を見ていた深成を見下ろす。

「真砂は格好良いなあって思ってただけだもん」

 そう言って頬を膨らませる深成を、真砂がまじまじ見た。
 そして、つい、と彼女の前髪を掻き上げた。

「ちょっと目が腫れぼったいな」

「あ……昨日散々泣いたからかな」

「ごめん」

 謝る真砂に、深成はふるふると首を振りながら、ぺとりとくっついた。

「わらわも勝手なことしてごめん。……あれ、そういえば、結局今回のことは終わったの?」

「ユリのことか?」

 真砂が言った途端、深成の顔が曇る。
 真砂の口からあのモデル美女の名前がさらっと出るのが、とても嫌だ。

「名前で呼んでたんだ」

 あきだってそうだが、そこは気にならない。
 元の感情が違うのだ。
 が、真砂は、あれ、という顔をした。

「あきから聞いたんじゃなかったのか?」

「聞いたよ。社長の……あれ? あの人、男の子……」

 真砂が頷く。

「え、だって名前……。芸名なの?」

「いいや? ユリって苗字だぜ」

 ぽかーん、と深成が口を開ける。

「奴の名前は『由利 鎌之介』。れっきとした男だ。まぁ俺も全く気付かんかったが」

 ミラ子社長も、男だ、とは言わなかったらしい。
 そこは単純に面白いから黙っていただけだろう。

「初めっから男だ、と言っておいてくれれば、お前にも言ったのにな」

「そ、そだね。男の人だったら、いくら綺麗でも安心かも」

 真砂が知ったのは、決戦の土曜日の直前だったらしい。

「でも奴は、結局俺まで駆り出した意味なく、別れようとしてた男と付き合うことになったようだ」

「え」

「女の奴に惚れたわけじゃないからいいんだと」

「へ、へぇ~。凄いね」

「後は社長がどう言うかだな」

 別に真砂は別れさせてくれ、と言われたわけではないから、結果がどうなろうと関係ないが。

「まぁその辺のことは、俺はもうお前のことしか頭になかったから、あんまり覚えてないんだがな」

 そう言って、真砂は改めて深成をきゅ、と抱きしめた。
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