傷ついてもいい
約束
帰り道、田中女史に電話で報告をして、急いで電車に乗る。

最寄り駅に着いてから、だんだんと足が重くなってきた。

怒ってるだろうな…

午後の陽射しが照りつけてくる。

汗を拭いながら、マンションのエントランスに入った。


エレベーターに乗ろうとすると「佳奈!」と背中 から声が聞こえた。

「え?」

振り返ると斎藤が立っていた。

「おかえり。早かったんだな」

「あ、うん、どうしたの?どこか行ってた?」

「あ、えーと」

斎藤は、少し口ごもる。

「迷ってたんだ」

「何を?」

「暑かったし、駅まで車で迎えに行こうかと思ったんだけど。でも、なんかウザいと思われるかなと思って。で、結局、玄関先でウロウロしてたら、佳奈が帰って来たから」


聞きながら佳奈は、心が温かくなってきた。

「…ありがと…。ごめんね」


佳奈は、その場で斎藤に抱きついた。

「あ、ちょっと、佳奈?」

斎藤は、慌てている。

「ごめんね、今日は、ずっと一緒にいよ」


佳奈は、斎藤の顔を見上げる。

斎藤は、笑って「うん」と頷いてくれた。

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