傷ついてもいい
カラカラと引き戸が開いて、柚香が戻ってきた。

「あ、すいません。私、もう帰ります」

佳奈は、柚香にそう言ってカバンを持つ。

「ありがとうね。佳奈さん」

「うん。お大事にね」

じゃ、と直己に軽く手をあげて部屋を出た。

柚香は、エレベーターの前まで送ってきてくれた。

「花村さん、なのかな?」

エレベーターを待ちながら、柚香が言った。

「え?」


佳奈は、柚香を見る。

「相澤くんの好きな人」

「まさか!そんなわけないよ!」

佳奈は、顔の前でブンブンと手を振る。

「けど、私も頑張ります」

柚香はにっこりと笑って、バイバイと手を振った。

佳奈は、動揺を隠せないままエレベーターに乗りこみ頭を下げた。

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