傷ついてもいい
別れ
「そうかあ、じゃあ相澤くん、もう出て行っちゃうんだ」

「うん…」

佳奈は、久しぶりに麻衣子と呑みにきた。

最近よく呑むようになった気がする。


「まあねえ、寂しいだろうけど、その斎藤さん?って人がいるんだから、いいじゃん。私なんか全くないんだから!最近!」

麻衣子は、ぶうぶうと羨ましそうに言う。

「佳奈もしかして、今、モテ期じゃん?」

「え?そうかな?」

佳奈は、人生を振り返ってみる。

今迄、二人の男の間で揺れ動いた経験は、そういえば無かった。

「いいなあ!その斎藤さんって銀行員なんでしょ?しかも大手都銀の!めっちゃいいじゃん!私にも誰か紹介してもらってよお」


麻衣子に言われて佳奈は、段々自分の立場がわりといい場所にあることに気がついてきた。

自分さえその気になれば、すぐに結婚だってできるのだ。

斎藤なら、両親にも堂々と紹介できる。

「うん、今度斎藤さんに話してみるよ」

佳奈は、少しだけ得意気に言った。
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