傷ついてもいい
他人同士
「ちょっと、花村さん」

田中女史に呼ばれて佳奈は「はいっ」と立ち上がった。

田中女史の仕事は、だいたいややこしいことが多い。

「これ、前期の授業料未納者のリスト。電話かけといて」

田中女史は、最近きつくなってきたらしい老眼の為に、眼鏡をかけたり、外したりしながら言う。

「あ、はい…」


やだなぁ…と思いながら席につくと、「嫌な仕事は、バイトの仕事」と麻衣子が前でニヤニヤしている。

「手伝おうか?」

「ありがと!麻衣子」

佳奈は、麻衣子に手を合わせて、リストを何枚か渡した。

「あれ?」

麻衣子が声をあげる。

「ね、商学部4回生の相澤直己って…」

「え?!」

佳奈も驚いて声をあげた。



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