もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~

“類は友を呼ぶ”なんてのは嘘なのか……



それか、実はジュンも隠れお喋りってことも有り得る。



「おーい!ジュン!こっち来いよ!」



「ち、ちょっと!ミキヤ君!」



ミキヤ君がジュンに向かって挙げた手に、私は勢いよく掴みかかる。



「リンちゃん、じゃなくてジュンレイちゃん。君付けで呼んでくれた?」



まだ、ジュンに来られたら困る。



あんな別れ方をしたんだから、私にも心の準備ってのが必要で……



リュウに助けを求めようと思ったのに、リュウは携帯電話を耳にあてながら、私達からどんどんと遠ざかってる。



「もう一回呼んで!」



ミキヤ君は掴みかかった私の右手を、両手で握りしめ、じっと見つめてくる。



気のせいか、顔がどんどん近づいている気が……



「そいつの名前はスミレだ」



「はっ?」



私の背後から聞こえた声に、ミキヤ君は返答をしながら視線を移す。



私とミキヤ君は向かい合っている状態だから、私の背後ってことは、ミキヤ君からしたら、視線を上げるだけで視界に入る場所に、声の主はいる。



「スミレだ」



その声の主が誰なのかはわかっているけど……



「ジュンレイちゃんじゃないの?」



再び戻ってきたミキヤ君の視線で、今の言葉は私に発せられたものだと理解した私は、コクリと頷いた。



「えっ?なんで?」



何でって……正直、説明するのは面倒くさい。



「ジュンちゃんじゃなくて、スミレちゃんって呼んだ方がいいの?」



「そうしろ。理由は面倒くさいから聞くな」


< 300 / 342 >

この作品をシェア

pagetop