もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~


「別に素っぴんだろうがなんだろうが、どうでもいいんじゃね。今日からここに住むんだし」



「はっ?!」



何?なんて言った?



別にいいよ。



素っぴんくらいでガタガタ言うなとか、化粧しててもたいして変わんねぇとか、暴言吐かれるのはヨシとしよう。



だって、ジュンなら絶対そんなこと言いそうだしね。



「はっ?ってなんだよ?」



「えっ?!何?」



私はなんで睨まれてるのか、全然わかんないし。



「ジュン、もう一回言って」



もう、この際睨まれててもいいよ。



ただ、その前に聞き捨てならない台詞を確認したい。



「聞いてないのに変なリアクションすんな。お前が今日から、ここに住むのに素っぴんだろうが、化粧してようが関係ねぇだろって言ったんだよ」



「ここってジュンの家だよね?」



やっぱり、聞き間違いなんかじゃない。



「あぁ?!おい、リュウ!!話してないのか?!」



何で今日から、ジュンの家に住むわけ?



私はとうとう、とーちゃんに捨てられた?



私がこんなふうに訳がわからない状態に陥っている原因はリュウにあるらしい。





怒りの矛先をリュウに向けたジュンは身を乗り出して、「えぇ?!」だか「あぁ?!」だか凄んでいた。



もう、私はそれどころじゃない。



マジで疲れた。マジでやんなる。



兎に角、一人でゆっくりしたいけど!!



「いやいやいや、ジュン君怖いよ」



「説明して、納得させてから連れてくるって言ってなかったか?!」



「時間がなかった!!今話せばいいじゃんね?!す、純麗ちん?何、それ?」



私はソファーに体育座りをして、髪の毛で顔を隠していた。



いつからだろう……



理解したくないことがある時、話を聞きたくない時、いつもこうしていた。



現実逃避まではいかないけど、どうしようもない感情をコントロールするために、殻に閉じ籠る。



そうしないと、壊れてしまいそうだった。



他人である、とーちゃんとの生活が寂しくて苦しくて、幼かった私には理解できなくて、一人になるのは怖いのに、自ら一人になることを望んでいた。



「大丈夫。純麗ちゃん、ゆっくりでいいから。ゆっくり話をして決めよう」



温かい。



こんな奇妙な格好をしている私を抱き締めてくれたお母様は温かい。



ジュンに感じたそれよりも温かくて、涙が出るよ。



温かい人に育てられると温かくなれるのかな……



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