もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~


リュウがそんなことを言うってことは、もうなんらかの手は討っているはず。



それを自慢したいがために話を振っている気がして、敢えてスルーしてやった。



日頃の仕返しだよ。



今日だって私が何も知らなかったのはリュウのせいだったみたいだし。



ジュンは知ってか知らずかタイミング良く、私の疑問に答え始める。



「アイツが知り合いなんだ。だから、何度か会ったことはある」



「アイツ?」



「親父」



「そうなんだ……」



私は本当にとーちゃんのこと、何も知らないんだな。



大袈裟に言えば、ホテルでのとーちゃんしか知らないわけだし。




「ジュンのお父さんってさ、その、なんていうのかな?!リュウのお父さんと同じ職業なのかな?って……いや、だから、何ってわけじゃないんだけど!!てか、リュウのお父さんの職業も何となく知ってるだけだし?!本当にそうなのかは、聞いたことはないからさ!!」




聞きたいことを何も考えずに口にしたはいいけど、話してる途中で気軽に聞いちゃいけないことのような気がしてテンパった。



そのせいで、余計なことまでベラベラと……



「いや、正確にはジュンのお父さんの職業が知りたいわけじゃなくて、リュウのお父さんの職業が知りたいんだけど……あ!!違うよ。リュウになんて興味はないからね。とーちゃんがリュウのお父さんの部下だっていうからさ。結論はとーちゃんの職業が知りたかったの。保護者の職業も知らないなんてどうかなって」



「答えるから、落ち着け」



「うん。そうだよね」



「ぶっ!!!!!!」


テンパってる私を思いっきり馬鹿にしたように吹き出したリュウは「ここは俺の役目でしょ!!」と私達の間に割って入ってきた。



「近すぎるぞ」



ジュンは文句を言いながらも、自分が体を動かして避けたってことは、リュウに説明させるってことだよね。



私とジュンの間には人一人分のスペースもなかったのに、そこへ無理矢理割り込んできたから、私達3人は物凄く接近して座っている。



ジュンは避けたから離れたけど、私とリュウの距離は近いまま。



「で、純麗ちゃん。僕ちんに何を説明して欲しいのかね?」



「ホント近いし」



「えっ?なんだって?」



喋り方といい、すっとぼけた表情といい、かなりムカつく。



「リュウ、離れろ」



「僕ごときに妬かないの。あれ?ジュン君は僕ごときだから妬くんだったかな?」



「うるせぇこと言ってないで、こっちにこい」



ジュンね呆れた口調と共に、リュウの体はジュン側へと引っ張られた。



そして、私に向けられた視線。



改めて、ジュンにこうして見つめられるとドキドキしてしまう。



「コイツに説明してもらえ」



「えっ?!」



「俺より得意だ」



やっぱり……そういうつもりだったんだ。



私はさ、ジュンの口から聞きたいんだけどな。



確かにリュウのほうが、聞いたことにはわかりやすく答えてくれるけど……リュウじゃなくて、ジュンと話したい。



そうは思っても素直な気持ちは言い出せないまま床に視線を落とした。



すると、がさごそと誰かが動く気配がしたと思ったら背中に温かな温もりを感じる。



「ジュン?」



ジュンは私を後ろから抱きしめるように座っているから、私は振り返りジュンの顔を見上げた。



「さっさと聞きたいこと聞いちまえ。で、二人きりになるぞ」



わかってくれたのかな?



私が思っていたことジュンはわかってくれたのかな?

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