バスボムに、愛を込めて
15.恋心、梅雨入り


展示会での成果は上々……だったらしい。

あのあと、あたしはボロを出さないように必死になることしかできなくて、周りが全然見えていなくて。

気がつけば、あんなにたくさんあったブースは解体されていて、後片付けも終盤に差し掛かっていた。


「羽石さん、これからベースメイクの皆でご飯でも、って話出てるけどどうする?」


余った試供品を段ボールに詰める作業中、近くにいた先輩社員に尋ねられ、あたしは少し考えてから聞き返す。


「あの……参加しないとまずいでしょうか?」

「ううん、そんなことないと思うよ。今日は皆疲れてるから、出る人もそんなに多くないみたいだし。羽石さんも展示会初めてだったんだもんね、気にしないで家でゆっくり休んで?」

「すみません、ありがとうございます……」


疲れてる……っていうのとは少し違うけど、食欲もないし、何より笑顔を作れる自信がない。

仲良しの麻里ちゃんがここにいれば相談もできたけど、彼女は留守番組らしく、会社で通常業務をしているそうだ。

すべての作業が終わると、何もない巨大な空間に姿を変えた展示場を、あたしはとぼとぼと出入り口に向かって歩いた。

もう一度本郷さんと話ができないかとその姿を探してみたけれど、もう帰ってしまったらしい。
彼の姿はおろか、他のメンズコスメ部門の社員たちも見当たらなかった。



< 125 / 212 >

この作品をシェア

pagetop