バスボムに、愛を込めて


「そう、ですか……」


でも、少しずつよくなっているのは確実だよね? だって、デートの時は手を繋ぐことでもすごい進歩だったんだもの。


「さっきのも……勇気が要ったんだ、実はものすごく。それでも、お前にそうしたい気持ちの方が勝った」

「本郷さん……」


憧れだった本郷さんに、そんな言葉を掛けてもらえる日が来るなんて……幸せな気持ちが溢れすぎて、胸が苦しい。
あのデートの日と同じで、嬉しいのに涙が出そうだ。

そんなあたしの熱い視線に気づいた本郷さんは、少し頬を赤く染めてゴホッと咳払いをすると言った。


「……帰るか。葛西がかなり威嚇したから受付にはもう何も咎められないはずだ」

「い……威嚇?」


そんな物騒な……。でも、寧々さんならやりかねないけど。

気づけば静かになっていた背後をくるりと振り返ると、床に正座させられた孝二と、その正面に仁王立ちする寧々さんが見えた。


「まだかかりそうだな……説教。でも、足技が飛び出さなかっただけでもマシか」


足技? その発言にキョトンとするあたしに、本郷さんはこそっと耳打ちした。


「後輩に怖がられたくないから内緒らしいが、アイツ週三でテコンドー習ってるんだ」

「テッ……」


テコンドー!?と叫ぼうとした口は、本郷さんの手に塞がれた。

そして口元に人差し指を立てて「しっ」という仕草をした彼が素敵すぎて、テコンドーの驚きはすぐに胸キュンに上書きされてしまった。

今日の本郷さんは心臓に悪い。あたし、AEDとか持ち歩いた方がいいかも……


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