バスボムに、愛を込めて


「その兄貴っていうのやめてくれない? リョータよ、リョータ」


顔をしかめながらポーチの階段を下りてきたキレイな男性が、あたしたちの前の白い門を開けてくれる。


「や、やっぱり本物のリョータさんなんだ……」


思わずそう口走ってしまったあたしに、リョータさんはにこっと微笑む。

うわぁ……テレビで見るよりずっと綺麗。そのお肌は何か塗ってるのかな?
そういうことには敏感でなきゃならない職業のあたしでも、それが素肌かそうでないのか判断できない。


「私のこと知ってるのね?」

「も、もちろんです! 昨夜の“リョータが教える三分メイク術”も見ましたし、雑誌でもいつもメイク参考にしてます!」


そう、彼はプロのメイクアップアーティスト。
腕も確かだし、中性的な顔立ちにオネエ言葉が人気で、雑誌でもテレビでもよく活躍している。


「ありがとう! 瑛太、アンタの彼女すごくいい子ね!」


いい子だなんてそんなぁ……と頭をかくあたしと、微笑みを絶やさないリョータさん。

でも、この場に一人だけ冴えない顔をした人が。


「……お前ら、なんでいきなり馴れ合ってるんだ」


あたしの隣にいる本郷さんが、低い声で呟く。

そりゃあ、恋する女子の味方リョータさんに会えたんだもん。女の子ならテンション上がるでしょう!と熱弁する前に、そういえば……と思い出す。


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