バスボムに、愛を込めて


「本郷さんの、会いたくなかった“お兄さん”ってもしかして……?」

「……今お前の目の前にいる本郷涼太だ」


……やっぱり! それを聞いてから二人の顔を見比べれば、流れるような切れ長の瞳やスッと通った鼻筋はよく似ている。
 
本郷さんがこんなにイケメンなのは、リョータさんの弟だからなんだ、と妙に納得もしてしまう。


「さぁさ、こんな場所で立ち話も何だし、中に入って?」

「……母さんは?」

「夕飯の買い物よ。瑛太が久しぶりに帰ってきて、しかも女の子連れてくるって聞いて張り切ってたわ」

「……じゃあ、俺たちは部屋に行くから。母さんが帰ってくるまで声かけるなよ」


そう言って、リョータさんの脇をすり抜けてしまう本郷さん。

ちょっと、冷たすぎませんか……?

そう思ってリョータさんを振り返ると、彼は全然気にした素振りもなくあたしに手を振ってくれたので、あたしは曖昧に微笑んで小さく頭を下げた。



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