バスボムに、愛を込めて
「なな、なんでしょう?」
熱い視線を送る方には慣れてるけど、本郷さんの方からじっと見られるのは初めてのこと。あたしの心臓は過剰に飛び上がった。
「意外と……」
知的な薄い唇が小さく動く。ふたりきりという状況も手伝って、あたしの胸の高鳴りは強くなる一方だ。
「まともだな、お前。キムチから羽石に昇格させてやろうか」
「ほっ! 本当ですか!?」
やったぁ、すごい出世!
感激して実験台に身を乗り出すと、本郷さんがスマホを操作しながら言う。
「で、羽石に頼みがある」
「はい! この羽石美萌になんなりとお申し付けください!」
「金曜の夜に、このチームの懇親会をやるらしいんだ。その店を予約しておくよう川端さんに頼まれて、さっきから探してるんだがよくわからなくて……そういう店は女子の方が詳しいだろ? だから――」
懇親会! 本郷さんとお酒!
それを聞いただけでもう、あたしの妄想列車は猛スピードで走り出してしまった。