バスボムに、愛を込めて


――居酒屋にて。


『本郷さ~ん、あたし、酔っちゃったみたいですぅ』


あたしたちは何故か、うまいこと隣の席。

そして彼の肩にしなだれかかって、上目遣いをつくってみせる。


『仕方のない奴だな……送ってってやる。家はどこだ?』


言葉は冷たくても、本郷さんは優しいの。


『本郷さんのおうちに帰りたいなー』

『馬鹿。……じゃあ、こっそり抜け出すぞ?』


耳元でささやかれて、あたしはうなずくんだ。

そして二人は肩を寄せ合い、夜の街に消えていき……


***


「……羽石。そのマスクからはみ出てるのはまさかヨダレじゃないだろうな」


やーだぁ。だって本郷さんがあまりに積極的なんだもん……


「聞いてるのか?」

「ふぇ?」


ぱちん、とふわふわした妄想が泡のように弾け、気が付けば正面から本郷さんの冷ややかな視線。


< 33 / 212 >

この作品をシェア

pagetop