バスボムに、愛を込めて


「きみは人の顔色から何か察するということはできないのか?」

「顔色? そういえば本郷さん、あまり血色がよくありませんね! もしかしてどこか具合でも……」

「……これは生まれつきだ」


し、失礼しました!と頭を下げて、さっきより若干早足になった本郷さんに小走りでついていく。

背、高いなぁ……美萌サーチ(ただの目測)によると、186センチってところ。

あたしが150とちょっとしかないから、キスをするにはちょっと苦労しそう……って、やだやだ、まだ早いってばぁ!

バシ、と本郷さんの背中を叩いたつもりでにやけていると、迷惑そうに振り返ったのは知らないOLさんで。


「ご、ごめんなさいっ!」


その場で平謝りして本郷さんの姿を探したけど、もうあの大きな背中は見当たらなかった。

先に行っちゃったんだ……

でも、今日から本郷さんと同じ部屋にいられる! 彼と同じ空気を吸える! これを機に、カレカノになることだって、きっと夢じゃない! 頑張れ、あたし!

天高く拳を突き上げると、周囲からは冷ややかな視線。

あたしは愛想笑いを残し、そそくさと会社に向かうのだった。


< 4 / 212 >

この作品をシェア

pagetop