バスボムに、愛を込めて


「み、見つけた! 本郷さん!」

「……できれば見つかりたくなかった」


ベンチの後ろ側に立っていた彼は、そう言いながらあたしの正面に回る。

隣に座るかな、と思って腰を少し横にずらすと、「俺は座らない」と冷めた声で言われた。


「……で。何の用だ。あんな堂々と人の名前を呼んでおいて、大した用じゃなかったら殺す」

「こ……ころ……っ!」

「冗談だ」

「わ……わかりにくいですよ。普段からあたしに冷たいから本気かと……」


まあ、本郷さんに殺されるのなら本望だけど。なんて本音は心の内で呟くだけにしておく。

だけど用っていうほどの用はないんだよね。

ただ、追いかけろって言われて、自分も本郷さんを怒らせちゃったことが気になったから、無我夢中で走って来ただけで……

でも……とりあえず、一番はこれかな。


「あの、ごめんなさい……」

「何が」

「寧々さんとのこと、詮索しようとして……」


< 63 / 212 >

この作品をシェア

pagetop