バスボムに、愛を込めて


ひゅう、とあたしたちの間を風が通り過ぎた。

それに目を細める本郷さんの足元では桜の花びらが舞い、こんな時なのにシャッターチャンスとか思うあたしは、ホントばかみたいに本郷さんが好きなんだと思う。


「……アイツのこと」


本郷さんが、眼鏡の奥の瞳でどこか遠くを見ながら言う。
アイツ……っていうのは、おそらく寧々さんのことだろう。


「はっきり言って、好きでもなんでもなかった」


そしていきなり飛び出した爆弾発言。

好きでもなんでも……って、え!?


「ちょ、ちょっと! その話詳しく聞かせて下さい!」


“詮索しようとしてごめんなさい”と謝ったばかりなのに、あたしは手のひらを返したように本郷さんの話に食いついた。

だって仕方がないでしょう! 今のを聞き流せと言う方が無理な頼みだ。


「……別に詳しくも何も言葉通りだ」

「いや、だって、好きじゃないのに付き合うって意味わかりません!」

「……ああ、そうか。普通はそうだよな。でも俺は……」


そう言いかけて、どこか自嘲気味に鼻で笑った本郷さん。

なんだろう……一瞬だけど、すごく寂しそうに見えた。


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