バスボムに、愛を込めて
さりげなく言ったつもりだったのに、孝二は片眉をぴくりと上げて立ち上がった。
そして部屋着を抱えて佇む私に大きな体で迫ってきて、思わず一歩後ろに下がると背中がクローゼットの扉にぶつかる。
な、なに……?
「予定って何だ。詳細を述べろ」
「べ、別に孝二には関係ないでしょ!」
それよりさっさと離れてよ!
威嚇するように孝二をキッと睨んでも、ますます顔を近づけてくるだけだ。
「簡単に口を割らないところを見ると、男か?」
「だったらなに?」
「……むかつく」
低い声でそう言われ、思わずびくっと身体が震えた。
今まで、孝二がどんなにガタイがよくて腕っぷしの強い男だと知っていても、“怖い”と感じることなんてなかったのに。
やだよ……そんな孝二、らしくない……
喧嘩がしたいわけじゃないのに睨み合っているこの状況と、今までの関係が確実に崩れ始めているのが悲しく思えて、段々と私の瞳に涙が溜まってきた。