バスボムに、愛を込めて


孝二に泣き顔は見られたくない、とふいっと視線を逸らすと、その先に見えたのはバッグからはみ出たスマホ。

ランプが黄色く光ってる……電話だ。――本郷さんかも。


「孝二、ちょっとどいて!」


ドン、とその身体を押し返し、持っていた着替えを床に放るとバッグからスマホを取り出す。

“着信 本郷瑛太”

目に飛び込んだのは、そんな胸ときめく表示。

あたしは孝二に邪魔されないようにとトイレに駆け込み、大きく深呼吸をしてから電話に出た。


「も、ももももしもし!」


あぁバカ美萌、どもりすぎ!


『……桃?』


ほら、本郷さんに伝わってないじゃない!
余計にテンパって、スマホを持つ手に汗が滲んでくる。


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