バスボムに、愛を込めて


――あ、寧々さんのことだ。

なんだかその話だけ聞くと本郷さんがすごい冷酷男に見えてしまうけど、内情を知っているあたしはちょっと複雑だ。


「本郷さん、そんなに冷たい人でもないよ」


あたしは、電話越しに聞いた彼の柔らかい笑い声を思い出しながら、麻里ちゃんに言った。


「それ、美萌にだけなんじゃないの?」

「え?」


麻里ちゃんがにやにやしながら、あたしをじっと見てくる。


「私も仕事の上で少し話したことあるけどさ、なんていうかもう“クール”の塊で、にこりともしてくれなかったし」


確かに、あまり笑わない人ではあるけど……でも、“あたしだけ”って言うのは違うと思う。
チームの皆とは、わりと和やかに話しているし。


「さすがにまだそこまで仲良くはなれてないよ。ただ、“おもしろい(変な)後輩”とは思ってくれてるみたいだけど」


そりゃ、麻里ちゃんの言うような関係なら嬉しいけどね。

あたしはグリーンカレーを頬張り、おいし、と呟く。


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