バスボムに、愛を込めて


デートとは思えないほどのしかめっ面で近づいてきた本郷さん。

その表情を無視してまずあたしの目を釘付けにしたのは、その見慣れない眼鏡。

いつも会社でしてるのと違う……!

普段は知的に見えるスクウェア型のメタルフレームなのに、今日はシャープなお顔がより小さく見える、おっきめの黒縁眼鏡。

初めて見る休日用の彼に、あたしの萌えメーターはすでに振り切れてしまった。

もう、これ見れただけでもあたし人生に悔いなし……って、初めての電話の時も思った気がする。

本郷さんが素敵すぎて、命がいくつあっても足りないよ。


「確かに待ちましたけど! でも、あっという間でしたよ!」

「物好きな奴。……バス乗るぞ」


そう言われても、まだ首から下のファッションチェックが済んでない。

あたしはじいいっと本郷さんの服装を眺め、またも胸キュンポイントをたくさん発見して胸に瀕死の痛みを負う。


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