バスボムに、愛を込めて
11.お弁当の行方


約束の十一時、ちょうど三十分前。
待ち合わせ場所の駅前に付いたあたしは、お弁当の入ったバスケットを手に高鳴る胸を押さえ深呼吸する。

頭には日射しを防ぐストローハット、鮮やかなブルーのジャケットを羽織った下にはボーダーワンピ。
そして足元にウェッジソールのサンダルを合わせたあたしは完璧に海の似合う素敵なお嬢さん!

……だと思うんだけど。

今日、本当に、あたし、本郷さんとデートなの? だなんて、当日になって現実味が薄れていて、足元がふわふわする。

気温の高い今日は遠くのアスファルトに陽炎がゆらめいていて、そこを通り過ぎる車は蜃気楼みたい。

ああ、今の状況が全部夢だったらどうしよう。
昨夜は緊張のせいかよく眠れなかったから、今あたし、立ったまま寝てたりして?

そんな、あり得ないことをぐるぐると考えながら、待つこと三十分。

電車がちょうど到着して騒がしくなった駅の改札の方から、ものっすごいイケメンが歩いてくるのが見えて、あやうくバスケットが手から離れるところだった。


「――まさか本当に三十分前から待ってたのか?」


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