バスボムに、愛を込めて


……なんてこと。

休日なのに朝六時に起きて、握ったり揚げたり炒めたりしたのは本郷さんに食べて欲しいからだったのに……

ショックが大きすぎて吊り革から手が離れ、がたがたと揺れるバスの振動に思わずよろめくあたし。


「馬鹿、なんで手を――」


咄嗟に背中を支えてくれた本郷さんは、あたしの顔を見て口を閉ざす。

そして彼の気まずそうな表情を見て気づいた。――自分が泣いてるってことに。

わ、ばかばか。まだ始まったばかりのデートで泣くなんて、あたしのばか……!


「目……! 目にゴミがですね!」


ばればれの嘘をつくあたしに、本郷さんは呆れたようなため息をついた。

当然ながら慰めの言葉もなく、彼は行き先を示す車内前方の画面を見ると、そっけなく言う。


「……次で降りるぞ」

「は、はい……」


あたしは覇気のない声で返事をしながら、目的地に着く前にこんな雰囲気を作り出してしまった自分を恨んだ。

お弁当食べてもらえないくらい何よ。
本郷さんに冷たくされてるのは慣れてるじゃない。……って、自分を励ます理由も切なすぎだし。


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