バスボムに、愛を込めて


思い出に浸るのはそこまでにして、コンクリートの階段を下りるとそこはもう砂浜。

あたしはサンダルを脱いで手に持ち、素足でそこに降り立った。


「あー、懐かしい、この感じ!」


歩くたびにさらさらと足の指を滑り落ちてく細かい砂が、少しくすぐったくて気持ちいい。

また“そんなことしてると汚れるぞ”とか言われちゃうかもしれないけど、サンダル履いてたってどうせ砂は入ってくるもの。


「……じゃあ、俺も」

「え?」


振り返ると、本郷さんが靴と靴下を脱いでいるところだった。

それが衝撃的すぎて、あたしはさっき彼に言われるだろうと思っていたことを自分の口から発した。


「ほ、本郷さん! 足が汚れちゃいますよ!?」

「……いいんだ。今なら耐えられそうな気がする」


そうして素足であたしの隣に並んだ本郷さん。

しばらく真顔でいるものだから、やっぱり本当は嫌なんじゃ……と心配していると、ふいに口角を上げた彼が言った。


「……やっぱり、いいな。海は」


その横顔はとても穏やかで、あたしはほっとして海の方に向き直る。


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