情熱効果あり
「ん?」


「お皿が、危ない…」


「麻衣さ、燃える恋がしたいんだろ?提供出来るようにするよ」


耳元で囁かれる。


「哲志先輩!恋は提供するものではないです。ちゃんと好きになって、燃える恋がしたいんです」


私は少し緩んだ腕の中から脱出して、持っていた布巾と皿を哲志先輩に渡す。


「あとは、お願いします。急用を思い出したので帰ります。ありがとうございました!」


「ちょっと、待って。麻衣、返事は?」


「保留です!」


急いでバッグを持って、外に出た。ここからだと家まで歩いて20分くらいかかる。

でも、哲志先輩に送ってもらいたくなかった。いつもと違う哲志先輩に動揺してしまったことを気付かれたくなくて、逃げるように飛び出した。


返事を断ることしないで、保留した理由は自分でも不明である。

だって、断る理由がなかったから。



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