地の棺(完)
ふたつめの真実
話は後から。

そう言って快さんは雪君と桔梗さんをつれて緑の扉の奥へと姿を消した。

残されたわたしと初ちゃんは、無言のまま二階へと移動する。



わたしがしなくなって三時間がたっていると快さんは言った。

もっと山の中をうろついていたような気がしたけれど、実際はもっと短かったらしい。

屋敷の中は静まり返り、湿気混じりのむっとした空気に満ちていた。

カフェスペースの前を通るときに、ソファーにベッドカバーがかかっていることに気が付く。

ふっくらとした膨らみが気になって近づこうとすると、


「やめといたほうがいいんじゃない」


と、初ちゃんが止めた。

振り向くと、初ちゃんはわたしの顔からさっと視線を外す。


「……多恵だよ。そこにいるの」


絞り出すような弱弱しい声。

でもわたしの心に衝撃を与えるには十分だった。


「た……」


震えが足から徐々に体を這いあがる。

崩れそうな体を必死に保ち、流れる涙を両手で隠した。


「部屋に行こうよ」


初ちゃんが四号室に向かって廊下を移動する。

ベッドカバーに伸ばしかけた右手を左手で抱きしめ、その後に続いた。






******



鍵を持った初ちゃんが扉を開けて中に入ると、そこはわたしの記憶に残るままの姿だった。

そんな些細な事にほっとする。

初ちゃんは開いたままになっていたカーテンを閉め、ベッドの上に座り込んだ。


「すっごい汚いんだけど。シャワー浴びてきたら?」
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