地の棺(完)
眉間に皺を寄せた三雲さんの口から語られた話は、わたしが思っていたよりも深刻なものだった。


簡単にまとめると……


豪雨のせいで土砂崩れがおき、道が通れなくなっているということ。

電話や携帯が使用できなくなっているということ。

山の反対側は高い崖が広がり、わたしが通ってきた道以外、港町にはいけないこと。

この山は志摩家の持ち物なので、加岐馬島の島民がめったに寄り付かないということ。

つまり、誰かが土砂崩れに気づいてくれるまでここから出られないということ。



話を聞いた時、目の前が真っ暗になった。

冗談じゃないって。

今にも泣きそうなわたしを見て、神原さんが口を開く。


「大丈夫ですよ。
一か月もすれば町の御用聞きがきます。
いや、もしかするともっと早いかもしれません」


「……土砂は人の手で取り除けないんでしょうか?」


わたしの言葉に、神原さんは目を丸くした。


「いいね、それ」


そういって隣の快さんが爆笑する。


「快さん、失礼ですよ」


そういって諌めた神原さんも目が笑っていた。


「昨日状況を見に行きましたが、人力では動きそうにない大きな岩がありました。

私達ではどうしようもないかと」


「そうですか……」


俯くと、目の前にいる桔梗さんがふふっと笑う声がした。

顔を上げると、先ほどの変貌を忘れてしまいそうな優しい微笑みを浮かべ、わたしを見ている。


「良い方向に考えましょう、蜜花さん。

柚子さんの思い出を集めて、ゆっくりと過去に浸る機会ができたと思えばいいのではないかしら?」
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