地の棺(完)
姉の思い出を。

確かに一癖ありそうな人達から、情報を集めようと思ったら、一週間では時間が足りなかったかもしれない。


その時、桔梗さんの隣りに座る雪君と目が合った。

心配そうにわたしを見つめていた瞳が大きく見開かれ、ぷいっと逸らされる。

話しかけようとして、桔梗さんがわたしを見ていたので口を噤んだ。

桔梗さんはテーブルに肩肘をつき、楽しそうに微笑む。


「妻の話は極端だが……なに、心配はいりません。

2か月は籠城できるぐらいの食料はありますし、すぐに誰か気づくはずです。

どうか、自分の家だと思って気楽に過ごしてください」


三雲さんが頭を下げたので、わたしは慌てて立ち上がった。


「いえ、わたしは、その、大丈夫です。
両親が……心配するからって、そう思っただけで」


「もちろん、連絡がとれるようになりましたら、私の方からご両親に連絡をいれさせていただきます。

快、雪、お前たちで蜜花さんが不自由しないようにサポートをして差し上げなさい」


三雲さんに名前を呼ばれた快さんと雪君は小さく頷いた。

ここまで気を遣わせてしまっては、わたしもいつまでも落ち込んではいられない。


(お父さん、お母さん、心配かけてごめんなさい)


胸の中で謝る。



夜の嵐により思いがけないことになった。


三雲さんの話が終わるまで、結局他には誰も現れなかった。

朝食までまだ時間もあったので、自分の部屋に戻ることにする。

快さんが付いてくるといったが、丁重にお断りした。

部屋に戻る途中、廊下の窓から外を見る。

空には雨雲が広がり、地面に大粒の雨が降り注いでいた。
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