地の棺(完)
気付くと口から言葉が漏れた。

その瞬間、ぞわっとする冷たい感覚が背中を這い上がり、息が詰まるような恐れに襲われた。

肩を両手で抱きしめ、後ろを見たがなにもいない。

鳥肌が立ち耳の後ろがモヤモヤする。


なに?

この不快感。


一気に部屋の室温まで変わった気がした。

さっきは冗談みたいな話だと、そう思ったのに。


真紀さんは、これは志摩家の噂話だといっていた。

どこで聞いた話なのか、どんな内容か詳しく聞く前に雪君が迎えに来て、聞けなくて。


まさか、噂話のせいで真紀さんが殺されたなんてことは……ないと思いたい。

でも。

波紋のように、わたしの中に恐怖が拡がっていく。


噂話は一滴の水。


しかしとても大きな呼び水。

人を喰う少年の幻影を、眠りから覚ますための。



わたしは震える体を抱きしめ、、体を小さく丸める。

そうすることで目に見えぬ恐怖から隠れたかったから。


その時、廊下がざわついていることに気づいた。

快さんやシゲさん、ほかにも何人か集まって話してる?

なにかあったんだろうか?

外に出たくない。

でも……



わたしは奥歯をきゅっと強くかみしめた。

後悔するためにここに来たわけじゃない。

そう思い、外に出る事にした。

ドアノブを握る手が、自分のものではないんじゃないかと思うくらい震えていたけれど。
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