地の棺(完)
再びの夜
午後七時。

わたしは食事部屋にいる。


入口に近い食卓の右端からわたし、雪君、桔梗さん、亘一さんで座り、反対側に快さん、シゲさん、初ちゃんが座っていた。

食堂の入り口には多恵さんと千代子さんが立ち、両手を前に組んだままこちらを見ている。

奥から食欲をそそる良い匂いが漂っているけど、食卓に料理は並べられていなかった。


雪君のドアをノックする音が聞こえた時、わたしは自分の部屋のトイレでうとうとしていた。

睡眠不足や精神的な疲労が原因だと思う。

慌ててドアを開けると、雪君は深刻な表情で食事部屋に集まってほしいと言った。

またなにかがあったのかもしれない。

すぐにそう思った。

食事部屋に来ると、皆深刻な表情をしていて、誰も会話を交わさない。

ただ、じっとなにかを待っているような、そんな異様な空気だった。


そこに、遅れて神原さんがやってきた。

全身泥まみれで、よく見ると眼鏡にはヒビが入っている。

皆驚きの表情で神原さんを神原さんは初めて見せる険しい表情で食卓の中心に立った。

あそこは三雲さんの席。

そういえば、三雲さんの姿がない。

開いたままになった入り口を見ていると、どんっという強くテーブルを叩きつけたような音が響いた。

驚いて振り向くと、テーブルに両手をついた神原さんが俯きガタガタと震えている。

その体の振動は、テーブルの端と端程の距離があるわたしにも伝わってきそうだった。


「も……」


喉の奥から絞り出すような、かすれた声。


皆が神原さんに注目していた。
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