不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~



悠太くんは、わたしの隣に立って、にこっと笑ってくれて。





「うん!」





わたしは迷う暇なくそう答えた。





「悠太くん、気を付けてね?
明里最近太ったからボート重いかもーー」





「ちょっと佐奈!?」





「間違いねぇな。」





「あのねぇ。
わたしのこと知りもしないで、よくそんなこと佐奈も颯真も言えるよね……!」





もちろん、わたしは太ってなんかない。
わたしの言葉に、悠太くんはははっと声を上げて笑い、悠里も便乗して笑っていた。





「じゃぁ颯真くん。
あたしと乗ろう?」





「……おー。」





悠里が自然と颯真の腕に触れて、そう声をかける。






自然と、二人組のペアが決まった。
その中で、不満気に声を出した人は一人。





「……ちょっと?
あたしは?
誰か一緒に乗ってくれるんだよね?」





佐奈は自分を指差しながら言う。





「え?お前ペア必要?」





「…………………。

颯真ちょっと顔貸しな……!」





「に、逃げて颯真くん……!」





「悠里は誰の味方なのよ……!!」





颯真を追いかける佐奈と、逃げる颯真。





その回りで、わたし達は笑っていて。





このメンバーでいることが、"楽しい"って。





そう思えるような時間だった。





「はぁー。
もう、いいよ。
じゃぁ、いいこと思いついたよ!あたし。」





だけど、このウォータースライダーが終わった頃ーー





この今の関係でいられなくなるなんて、
このときはまだ、思いもしなかったんだ。


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