"おなご弁慶" と呼ばれる盗賊が東都に現れた。 廃刀令が施行されたこのご時世に、 狙う獲物は"刀"――… "おなご弁慶"は獲物を仕留めるとき、 必ずこうたずねるという。 ｢お前、"クロトラ"を知っているか？｣ 反政府派のパフォーマンスか? それともただの愉快犯か？ ――情報屋組織の末端に身を置く青年･ワサビは、ある事情からこの賊を追うことになる。 ×　×　×　× ※以前公開していた『クロトラ！』の加筆･修正版です。※

ななちゃん、この村にはね。 顔無し鬼、っていう土地神様がいらっしゃるんだよ。 顔無し鬼は、鬼だけどとっても優しい鬼なんだよ。 お話しが大好きで、わたしらのお話しをなんでも聞いてくれる。 …え？なんで顔無し、なのかだって？ それはね、ななちゃん。 顔が無いからなんだよ。本当、本当。 ばあちゃん嘘は言わないよ。 とっても大事なことを、誰かにお話しするのって大変だろう？ ななちゃんには何か秘密はあるかい？ …そうかいそうかい。 ばあちゃんには言わなくてもいいからね。 ほら。誰かの顔を見て大事なことを言おうとするのは、恥ずかしかったり嫌だったりするだろう。 顔無しさまには顔が無いから、なんでもお話しできるのさ。 *Special Thanks* 紅花。様 ＮＡＮＡ様 花の名前様 ペンコ様 AtaRu☆様

この想いは決して実を結ばない。 それでも、その薄紅の娘に彼は――。 ☆不思議風味な恋愛掌編☆ 色んな想像をしながら読んでみて下さい♪

鬼売り、という者をご存知でしょうか。 それは文字通り、鬼を売る商人。 まあ鬼と申しましても、金棒を振り回したり、虎の皮を身につけていたりする類の鬼ではなく。 ひのたまや影…、魑魅魍魎のような小さな魔の事でございます。 鬼売りは、背中に負った大きなつづらにいっぱい鬼を詰め込み、諸国を行脚しておりました。 そしてふらりと、御武家だの大店だの庄屋だの 大きな家の勝手口に現れては ｢このつづらに入りたるは、鬼でございます…｣ と不思議な口上を始めるのでした。