かなさんのレビュー一覧

★★★★★
2013/06/21 13:28
繰り返すなかで、みつけたもの

後半に進むにつれて、涙が止まりませんでした。人と人の間には、お互いに伝えずに抱えている気持ちが、いったいどのくらいあるんだろう。 言わない。聞かない。それが、相手を思いやるからではなく。自分が傷つきたくなくて、逃げているだけなんじゃないか。 そのことに気づかされたとき、自分の心がすごく、ふるえるのを感じました。 言いたくない。聞きたくない。自分が、傷つきたくないから。でもそうして、相手を見つめることができなくなっていくことは、本当にさみしいこと。 それなら、伝えよう。ここにしかない今を、大切な人と生きるために。 作者さまのメッセージが、強く心にひびく作品。大切な人の話を、大事に聞きたい。一緒に笑いたい。相手にどう思われるかでなく、自分の思いに、向き合えるよう強くなりたい。 素晴らしいお話を、ありがとうございました。

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★★★★★
2013/06/17 23:19
張り巡らされる

文章は、優しく丁寧。 なのに、この駆け抜ける衝動・疾走感は、どこから湧き出てくるのか。 すこしのときめきと、期待。落ち込んだり、過去に揺れたり。そんな橙子の何気ない日常に、じわじわと広がりはじめる不穏な空気。 だれが味方でだれが敵か。 本当?嘘?あなたは誰? 信じてもいい?信じたい。だから、そばにいる。 橙子を始め、登場人物の性格や行動が、すべてお話のクライマックスに繋がっていく。伏線と計算に気づいたときは、思わずため息。 このお話、扱うテーマや登場人物の書き分けといい、本当に難しいところを攻めていると思う。なのに、読み手にほう…!!と息をつかせるようなこの筆力と、作者さまの気力に脱帽です。中途半端では絶対に書けない。携帯の画面で読んでいても、厚みを感じる素晴らしい作品です。

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★★★★★
2013/06/17 01:18
気持ちいい心地いい

心がすっきり。 独特かつ丁寧な、短めの文章のなかに、経験したことがあるようなやるせないモヤモヤがたくさん。 けれど、それらが透明な青い水にすべて溶けて流れていってしまうような。 眠る前にぴったり。こんな心地よいお話がたくさんつまった、短編集を読んでみたいです。おやすみなさい。

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★★★★★
2013/04/10 20:14
透明っていう言葉そのもの

とても痛く苦しいところに切り込んだ作品なのに、どうしてこんなに透明って言葉が似合うんだろう。 この物語を読んでいて、そう思いました。 晃が冬海に魅入られた時の描写。 私も一緒に、彼に引き込まれた瞬間でした。気がついたら、二人の幸せを願ってた。 二人がたどり着いたのは、決して何不足ない幸せの形ではないかもしれない。でも、これから二人で、二人だけしか作れない幸せの形を見つけていける。そう思いました。 晃が冬海に言った、 「わたしで消せばいい」 という台詞が、レビューを書いている今でも心に響いています。私も、こんな風に誰かを想えたらいいな。 素敵な物語をありがとうございました!冬海も、晃も大好きです。

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