蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
11 【約束】
「へぇー、すごいな。このケーキも自分で焼いたの?」
仕事から帰った拓郎は、玄関に入るなり、驚きの声を上げた。
狭い部屋なので、玄関を上がればそこはLDK。
突き当たりのLDスペースの食卓として使っているコタツの天板の上には、所狭しと、美味しそうな料理が乗っているのが見える。
一番目を引くのは、真ん中に置かれた、綺麗にデコレーションされたバースデイ・ケーキだ。
白い生クリームの上には、苺を中心に様々なフルーツが飾り付けられている。
「大家さんの所でオーブンを貸して貰ったんです。二個焼いて、一個お裾分けして来きました」
冷蔵庫から拓郎用のワインと、自分用のオレンジジュースを出しながら、藍が楽しげに笑う。
「喜んでただろう? あの人、甘い物に目がないから」
君恵のほくほく顔が目に浮かんで、思わず拓郎の口からクスリと笑いが漏れる。