蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

その日の帰り、藍は一組のレターセットを買った――。


白い封筒と便箋には、向日葵の花が描かれている。


藍は、そ向日葵の絵を、じっと見詰めていた。


「向日葵が好きかい?」


「はい、大好きです。向日葵の、いつも太陽を見詰めて『凛』と立っている、あの強さに憧れるんです……」


藍の微笑みには、力が無い。


やはり疲れたのだろうと、ねぎらいの気持ちを込めて、拓郎は藍の頭を軽くポンポンとたたいた。


「今度、そうだな。夏になった『向日葵牧場』に行ってみようか? 一面の向日葵畑が見られるよ。ほら、初めて会ったとき見せた向日葵畑の写真の場所」


「はい」


藍が、どこか儚げに笑う。


その笑顔の意味を、拓郎は全く気付いていなかった。

< 178 / 372 >

この作品をシェア

pagetop