蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

「はい。それに、プレゼントを頂いちゃいました。大家さんからは、ネックレス。美奈さんご夫婦からは、イヤリングだそうです。それに、恵ちゃんからは、可愛い似顔絵です」


「へぇ、メグちゃんが似顔絵を」


「はい。とっても上手に描けてるんですよ」


拓郎は、サイドボードの上に置いてある二つのプレゼントの包みと、8つ切りサイズの画用紙に目を走らせ、思わずぎょっとなった。


髪の長い女の子は、藍だろう。楽しそうに笑顔を浮かべている。耳には、黄色い石のイヤリング。首には、同じ石の付いたネックレスをしている。


ちなみに、この黄色い石は4月の誕生石の黄水晶、シトリン・トパーズである。


で、なぜ拓郎がぎょっとしたのかというと、その絵の中の藍が左手の薬指に指輪をしていたからだ。


そして、白いドレスを着ていて、手には向日葵の花のブーケを持っている。


どう見ても、『ウエディング・ドレス』だ。


おまけに、花嫁の脇にはカメラを持って立っているニヤケた花婿が立っているが、これは、拓郎なのだろう。


――美奈さん、謀りましたね。


十中八九、母親の美奈の巧みな誘導の元、描き上がった絵に違いない。


拓郎は、『ニヒヒ』と笑う美奈の笑顔が見えるような気がして苦笑した。

< 180 / 372 >

この作品をシェア

pagetop