【完】切ないよ、仇野君
痛いよ、仇野君
五月のGWに差し掛かった、一週目の休み。


私は多分、バスケ部に入ってから一番の緊張感に包まれていた。


「そんなに緊張せんでも良かろー?これからこういうんもっと増えるし、第一ちーちゃんが試合する訳じゃなかとに」


そんな私に、お茶の入ったドリンクキーパーの調整をしながら由貴先輩が笑う。


「そげんこつ言っても……試合観るん、初めてやっし……」


「試合って言っても練習試合やろうが!可愛かなぁ」


そう、今日は私達のこの水前寺高校の体育館に、他の学校の人が練習試合にやって来るのだ。


先週の南九州カップには私は風邪で行けなかったし、皆が試合をするのは初めて観ることになる。


この間の試合もバッチリ優勝して帰ってきた皆だから大丈夫だろうけど、それでもやっぱり、心配なものは心配なんだ。


そんな私の緊張とは打って変わって、部員の皆は和気あいあいとしている。


視線の先ではキャプテンとケイ先輩が海外のストリートバスケのチームについて言い合いのように熱く語り合ってる。


また、別のブースを見ると、泰ちゃんと雫ちゃんが、椿が作ってきたらしいパウンドケーキにほっこりしている。


椿は大きな欠伸を落としてフロアの隅っこでうとうとしてるし。


あれがうちの一軍五人だと思うと……少し、先が思いやられる。
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