二重螺旋の夏の夜
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正直、桜は少々迷惑だった。

まず、仕事から帰ってきても好きなように休めない。

特に金曜なんかはとりあえずビールを一杯飲んで、それから風呂に入って着替えて、一息ついたところで改めてもう一杯をくつろぎながら飲みたいのだが、そんなだらしないと思われる行動は慎まざるを得なかった。

それから、たいてい桜の方がいつも先に寝るので、そのあとにテレビを見たり仕事をしたりするときは、居間のすぐ隣にある寝室に音や光が漏れないように注意を払わなければならない。

部屋にいるときだって気を遣うのに、いないならそれはそれでどこにいるのかと心配しなくてはならない。

そんな暮らしを続けてきて、自分の部屋で自由に過ごせないことに少し窮屈さを感じていた。

それでも朝晩の食事を用意してくれたこと、洗濯物は洗ってから干して取り込んでしわを伸ばした上で畳んで置いておいてくれたこと、あと室内を物色したり妙な詮索をしないでいてくれたことには感謝している。

とりあえずできあがった、卵と枝豆と小さく切った豆腐を適当にフライパンで炒めたものを見つめて、そう感じた。
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