二重螺旋の夏の夜
ごめん
雅基への最後のメールがちゃんと送信できたことを確認して、わたしはケータイをトートバッグにしまった。

バスには他に乗客はおらず、わたしは一番後ろの一番左の窓際の席に座っている。

隣の座席に荷物を両方とも乗せて、自分自身は車体の揺れに身を任せていた。

窓の外の歩道にもほとんど人は歩いていなくて、たまにすれ違う人を目で追っては、また何もない、流れていく景色を眺める。

『今日じゃないと』――そう思ったのは今朝になってからだったので、会社には急に明日から有給が欲しいと言わざるを得なかった。

しかも今日は早退させて欲しいだなんて、通常ならば受け入れてくれないのだろう。

でも上司は優しい顔で「ゆっくり休んでおいで」と言ってくれた。

わたしはそんなに疲れて見えたのだろうか。

それともわたしがいない方がうまく仕事が回る、ということなのだろうか。

後者の方が可能性としては高そうだったが、いつも嘘をつかない上司を信じようと思った。

ごめんなさい。

仕事が嫌いなわけじゃありません。

本当は責任も放りたくないし、迷惑だってかけたくない。

でも…ごめんなさい。
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