お向かいさんに恋をして
「…………ゆかり……」

え……?

私も留奈さんも動きを止めた。

ゆかり……って、言った、よね……?

ハガキの人……!

二人で顔を見合わせる。
留奈さんは驚いた表情をしている。
私もきっとそういう表情をしているのだろう。

「秋中さ……」

「ゆかり……」

もう一度名前を呟いて、秋中さんは私の唇に自分のそれを重ねた。

「……!!」

……ファーストキスって、レモンの味だとかイチゴの味だとか聞くけど……。

まさかのお酒味……。

お酒は呑んだことがないからよく分からないけど、キツいアルコールの匂いがした。

ファーストキス、夢見てたんだけどなぁ……。
好きな人と素敵な場所で、とか……。

だんだん瞳が潤んでいくのがわかる。

「わ、私のファーストキス……」
< 124 / 226 >

この作品をシェア

pagetop