お向かいさんに恋をして
男性に抱きしめられるなんて初めてで、しかもそれが大好きな片想いの相手だなんて、本当に私はラッキーだ。

だけど酔った相手が寝ぼけて抱きついてきただけだと思うと切なくなる。

いつかちゃんと抱きしめてもらえたら良いな。
とりあえず今は起こして部屋に連れて行かないと。

って、あれ?

「る、留奈さん、ますます抱きしめられてるんですけど……?」

さっきよりもぎゅっと力強く抱きしめられ、戸惑いながら首を捻って背後に助けを求める。

留奈さんは苦笑いを浮かべながら、自分も屈みこんだ。

「秋中さん、秋中さん!
さくらちゃんは抱き枕じゃありませんよ~! 

離してあげてください?
でもって立って下さ~い」

言いながら、秋中さんの腕を私からひっぺがそうと奮闘する留奈さん。

私も動ける範囲でもぞもぞと身をよじってみた。

もう少しで腕から抜けられそう、そんな時だった。
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